最終更新日時: 2024年6月9日
教員の年金については、これまで公的年金を前提とした、私的年金づくりの記事を多くあげてきました。
例えば、以下のような記事ですね↓
この私的年金づくりを行う上で、土台にある教員の公的年金における仕組みを知ることはとても大事になります。
そこで、今回は公立・私立問わず、そもそも教員の公的年金制度に関する概要について整理していきます。
目次
教員の公的年金制度について
教員は、以前共済年金という公的年金でしたが、平成27年に厚生年金に統一化されて、私学教員・公立教員一律に厚生年金加入者となりました。
統一化された背景は、こちらの記事にまとめていますのであわせてご覧くださいね↓
民間企業の会社員と区別されていたものが、統一化されたことで、同じ厚生年金加入者としての括りになったわけです。
第2号被保険者として種別され、将来的な年金受給については、この厚生年金より出ることになります。
もちろん、平成27年以前の年金については共済年金として出ることに変わりはないため、年金額については多少変動がありますが、
以前の共済年金より少なくなっていくことから、教員の私的年金づくりについては、冒頭にご紹介した記事で様々な対策案をまとめています。
年金の種類について
公的年金については、老後にもらう厚生年金だけではなく、3種類の年金があります。
以下、一つずつ見ていきます。
①老齢厚生年金
まず、一つ目が老齢厚生年金です。
これは、イメージする通り、原則65歳以上になると、老後にもらうことになる公的年金の事を指します。
具体的な条件については、
・老齢基礎年金の受給要件である国民年金保険料の納付期間が10年以上
・厚生年金保険の被保険者期間が1月以上
・65歳に達している
かあげられます。
一つ目についてみると、ベースになる国民年金保険料を納めていないと、厚生年金の受給が出来ないということになります。
教員の場合、給与の天引きにより厚生年金保険料が差し引かれていますが、国民年金保険料もそれに含まれていることから、あわせて納めていることになります。
※特別支給の老齢厚生年金について
特別支給の老齢厚生年金とは、65歳になる前に年金がもらえるもので、条件に該当する方のみ貰うことが出来ます。
昭和61年の年金制度の改正にあたって、年金の受給年齢が60歳から65歳に引き上げられたことに伴い、
下記の条件に当てはまれば、当分の間、60~64歳までに特別の支給として老齢厚生年金を受け取ることが出来ると言うものが背景となっています。
要件について
その条件については、
・昭和36年4月1日以前に生まれた方
・老齢基礎年金の受給要件である国民年金保険料の納付期間が10年以上
・厚生年金保険の被保険者期間が1月以上
となっています。
②障害厚生年金
二つ目は、障害厚生年金です。
組合員期間中に初診日のある病気やケガにより、障害の程度が一定以上であると認定された場合に支給されるものです。
要件について
障害厚生年金を受給するにあたって、上記の状態になった場合でも、保険料をしっかり納めていないと受給資格はないんですね。
その要件としては、
・初診日に65歳未満で、初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
・初診日の前々月までにおいて、公的年金の加入期間の2/3以上で保険料の納付または免除されていること
のいずれかを満たしている必要があります。
ただし、20歳未満についてはこの納付要件がない代わりに所得制限があるので、上記の要件を満たす必要はないです。
年金額はどの程度もらえるのか?
障害厚生年金の受給額についてどの程度貰うことができるのか?ということですが、
まず、障害厚生年金の加入者は、障害基礎年金と障害厚生年金の合計額を受給することになります。
教員は厚生年金加入者ですが、例えば自営業者などは国民年金のみの加入となるので、障害厚生年金分は受給出来ず、障害基礎年金の部分のみ受給することになります。
障害基礎年金と障害厚生年金で、それぞれ計算方法が異なることから年額の受給額も変わってきますが、計算方法については細かいのでここでは割愛します。
受給額には幅がある
また、受給額には幅があり、
・子どもがいる世帯
・障害の程度が大きい
ほど、受給額が大きくなります。
障害基礎年金の基本額は、
77万9,300円(2021年5月現在)
であり、子どもがいる世帯や障害等級により、これに加算されます。
さらにそれにプラスして、教員のような厚生年金加入者には障害厚生年金があります。
障害等級が軽い場合でも、最低保障額が58万4,500円(2021年5月現在)と決められているので、障害基礎年金額にプラスすると、多い方であれば年額200万円を超える受給額があります。
よって、ライフプランを考える場合に
「働けなくなった場合」
など、あらゆる想定をするわけですが、上記のような受給額も頭に入れておくと、生命保険や就業不能保険等に加入する際の計画も立てやすくなります。
就業不能保険については、以前こちらにまとめた記事がありますので、あわせてご覧くださいね↓
なお、ここまで障害厚生年金についてまとめましたが、申請して認定を受ける必要があるので、障害状態になったからすぐ年金をもらえるというわけではないので注意する必要があります。
③遺族厚生年金
組合員が在職中に死亡したときや、年金を受給している者が死亡したとき、遺族に該当する者がいる場合に支給されるものとなっています。
この遺族年金についても、障害年金と同様、遺族基礎年金と遺族厚生年金に分かれており、教員は厚生年金加入者であることから、厚生年金保険料を納めておけば、万が一の場合は、遺族に対して遺族厚生年金が支払われます。
要件について
主な支給要件は、
・被保険者が死亡したとき
・被保険者期間の病気やケガなどにより、初診日から5年以内に亡くなっているとき
・老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上
となっています。
遺族基礎年金の支給要件から考えると遺族厚生年金は範囲が広い
そもそも、遺族基礎年金の場合、亡くなった人に生計を維持されていた、
・子どもがいる配偶者
・子ども
が支給要件となっています。
ただ、上記の要件通りだと、子どもがいない配偶者においては遺族基礎年金が支給されないということになるので不公平になりますよね。
そのため、妻が40~65歳になるまで
「中高齢寡婦加算」
というものが代わりに支給されます。
金額としては、遺族基礎年金額の3/4程度となるので、少ない額ではあるけど条件を満たせば、遺族厚生年金とあわせて受給することが可能になるということです。
なお、遺族厚生年金についての子どもの有無の要件についてですが、上記の支給要件をみると入っていないですよね。
子どもがいる配偶者でも、遺族厚生年金は受け取ることができるということなので、受給出来る範囲も広いということが言えます。
55歳未満の夫は注意!
ただし、
「妻を亡くした55歳未満の夫」
は受給出来ないため注意する必要があります。
遺族基礎年金も以前は妻側のみでしたが、平成26年の改正により夫も認められるようになりましたが、
遺族厚生年金については、夫で55歳未満であればまだまだ資力があるものとされ、受給する事が出来ないということです。
年金額はどの程度もらえるのか?
遺族厚生年金の受給額について、どの程度もらえるのか?ということですが、障害年金と同様に、基礎年金額と厚生年金額の合計額になります。
また、子どもがいる世帯か否かで変わってくるため、一概に貰える金額を弾き出すことが出来ないんですね。
ただし、遺族基礎年金のベースは決まっており、
年781,700円(2021年5月現在)
となっていて、これに子どもの人数に応じて加算されることになります。
さらに、遺族厚生年金額がプラスされるわけですが、金額としては、
「通常の老齢厚生年金額の3/4程度」
とされています。
こちらも細かい計算方法がありますが、概算だけでも押さえておけば大丈夫です。
金額としては、厚生年金加入期間と平均標準報酬額を基準に計算するため、加入期間や給与が多いほど、遺族厚生年金額も上がっていきます。
3階建て部分には年金払い退職給付
最後に、今までの話は公的年金の厚生年金部分、つまり2階建て部分をメインにお話ししました。
教員に関する公的年金の多くは今回の厚生年金部分になりますが、統一化等の流れもあり、現在、3階建て部分にあたる年金に、
「年金払い退職給付」
というものが存在します。
これも、公的年金のうちの一つであり、一般企業でいう企業年金に該当するようなもので、少しでもプラスαで受け取る年金額を増やす目的で制度設計されました。
この年金払い退職給付については、別途詳しい記事をまとめてありますので、こちらよりあわせてご覧くださいね↓
まとめ
今回は、教員の公的年金制度の概要について見ていきました。
厚生年金に統一化されて、以前のような複雑な年金制度は解消されました。
今後、教員は厚生年金保険を基に将来の年金計画を立てていく必要があるため、現在支払っている厚生年金保険の仕組みをしっかり理解して、私的年金づくりに取り組んで下さいね!
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